食道がんとは
食道粘膜に生じる悪性腫瘍で、本来の食道粘膜である扁平上皮に生じる食道扁平上皮がんと、繰り返す炎症によって円柱上皮に変化した粘膜部分に生じる食道腺がんに分けられます。食道粘膜が円柱上皮に変わってしまった状態はバレット食道と呼ばれており、食道腺がんはバレット食道がんと呼ばれることもあります。
日本人の食道がんの約90%は扁平上皮がんとされています。ただし、現在、バレット食道の原因となる逆流性食道炎の発症者数が増加傾向にあり、食道腺がんが今後増加する可能性が指摘されています。
食道がんは、食道壁の粘膜内にがんがとどまっている早期食道がん、粘膜下層まで広がっている表在食道がん、さらにその奥にまで広がっている進行食道がんに分けられます。進行がんになると血管やリンパ管にがんが浸潤して肺や肝臓、骨などに転移を起こす可能性があります。また、食道壁の外にがん細胞が広がって気管や大動脈などに直接がんが浸潤することもあります。
食道がんの主な原因は飲酒と喫煙
食道扁平上皮がんの主な原因は飲酒と喫煙です。特に少量の飲酒で顔が赤くなるお酒の弱い方は、飲酒によって体内で作られるアセトアルデヒドという発がん性物質の分解に関与する酵素の活性が弱く、食道がんの発症リスクが高いことがわかっています。さらに飲酒・喫煙の習慣があるとよりリスクが上昇すると報告されています。
こんな方には早めの胃カメラ検査をお勧めしています
- 喫煙習慣がある
- お酒を飲むと少量でも顔が赤くなる
- 50歳以上の男性
- 頭頚部のがんを発症したことがある
- バレット食道や食道アカラシアの診断を受けた
- 長年、逆流性食道炎を繰り返している
上記に1つでも当てはまる場合、食道がんの発症リスクが高い状態です。症状がなくても、1度、胃カメラ検査を受けて粘膜の状態を確かめましょう。
食道がんの症状
食道がんはほとんどの場合、自覚症状が乏しいまま進行しますので、早期発見には症状のない段階で受ける胃カメラ検査が有効です。
ある程度、食道がんが進行すると下記のような症状を起こします。こうした症状に少しでも気付いたら、できるだけ早く当院までご相談ください。
- 声枯れ
- 咳が続く
- のどやみぞおちの違和感
- 飲み込みにくい
- つかえ感
- 熱いものがしみる
- 体重が減る
- 胸や背中の痛み
上記のような症状は、食道がん以外の幅広い消化器疾患でも共通していますので、正確な診断のためには胃カメラ検査が必要です。
食道がんの検査
胃カメラ検査で食道粘膜の状態を確認し、病変の程度や範囲を正確に把握して病変組織を採取し、病理検査を行って確定診断します。胃カメラ検査は口や鼻から超極細の内視鏡スコープを挿入して食道粘膜を直接詳細に観察でき、早期食道がんの発見と確定診断が可能な唯一の検査です。
胃カメラ検査と造影剤を用いたX線検査
食道がんの検査として造影剤を使ったX線検査が行われることもありますが、この方法では変化に乏しい微細な早期食道がんの発見は困難です。また、潰瘍・隆起・狭窄などを伴う進行した食道がんの発見は可能ですが、確定診断のためには別途胃カメラ検査を受ける必要がありますので、最初から胃カメラ検査を受けていれば無駄な被曝をする必要もありません。
当院では、長年研鑽を積んだ専門医が精度の高い胃カメラ検査を行っており、鎮静剤を使うことで眠っているような深いリラックス状態のまま検査を受けられます。胃カメラ検査に苦手意識がある方も、安心してご相談ください。
食道がんの治療(手術)
がんの進行度に合わせた治療法を選択します。基本的に胃カメラ検査で食道がんと診断された場合には、適した治療を得意とする連携高度医療機関をご紹介していますが、治療内容の選択肢についてあらかじめ丁寧にご説明しています。不安や疑問がありましたら、些細なことでも遠慮なくお伝えください。
表在食道がん
内視鏡的治療、外科的治療(外科手術)、化学放射線療法(化学療法と放射線治療に併用)といった選択肢があります。どの選択肢が適しているかについては、食道周辺のリンパ節切除の必要性から判断されます。
リンパ節転移が起こるリスクが低いと判断できる場合は、内視鏡によって病変を切除するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が可能になります。全身麻酔が必要なく、傷も最小限に抑えられますので術後の痛みや心身への負担を大きく抑えられ、早い回復が期待できます。ただし、切除した病変の病理検査を行ってリンパ節転移のリスクがあると判断された場合には追加治療として外科手術などが必要になることもあります。
リンパ節転移のリスクがある場合には、外科手術や化学放射線療法が選択されます。
進行食道がん
外科的治療、化学療法、放射線治療といった選択肢があります。遠隔転移がなく、外科手術でがんを取り切れると判断できる場合には外科手術を行いますが、事前に化学療法を行ってがんを小さくしてから手術を行う化学放射線療法、術後の再発防止目的で化学療法を行う術後補助化学療法など、複数の治療法を組み合わせることもあります。
また、体力や年齢などの問題から外科手術が困難な場合や、手術を希望されないケースでは、化学放射線療法、放射線治療だけを行うこともあります。
なお、遠隔転移があるなど、がんを取り切れないケースでは、化学療法が選択されます。
早期発見と治療のために
早期の食道がんは自覚症状をほとんど起こしませんが、胃カメラ検査で発見が可能です。食道がんは早期発見できれば内視鏡による心身への負担がほとんどない治療で完治できる可能性もあります。
習慣的に飲酒・喫煙されている方、少量の飲酒でも顔が赤くなる方、逆流性食道炎を繰り返している方など、リスクが高い場合には定期的に胃カメラ検査を受けることが早期発見に有効です。